「体罰根絶に向けた総合的な対策」に部活動は本務であると書かれている件

教育委員会の人手不足による文書の遅延か、副校長の仕事が多すぎて処理が遅れたのかわからないが、自分の勤務地では9月に東京都教育委員会から発行された「体罰根絶に向けた総合的な対策」という冊子が今頃になって全教員に配られた。一連の体罰事件に対する総括として教員の研修を深めるための冊子なので目を通す。その冒頭に部活動の曖昧な位置付けが体罰の一因となっているかのごとき記述があった。

『「部活動の指導は本務でない。」「部活動指導はボランティアで行っている。」と誤解している人がいる』

誤解どころか中学校では「部活動は本務ではない」という共通認識で部活動をやっている。入学時の保護者会で校長にこの点を明確に言ってもらうことから部活動が始まるといってもいい。自分の知る限り「部活動は本務だ」と考えている教員は一人もいないと思う。都立高校で部活顧問を持つことが管理運営規則になったことは、7、8年前くらいに「部活顧問のしおり」のような冊子が配られて知った。そこときたまたま校内の部活顧問会の代表だったので、都の教育委員会に電話で聞いたところ学校長に職務命令で部活顧問をやらせる権限はないが、学校運営方針に「全教員が部活の顧問をする」と書くこと自体は問題ないとのことだった。今の勤務地では管理運営規則で全教員が顧問を担当することになっているらしい。ただし、そういう規則があるといううわさがあるだけで、文書で見たことはない。

「体罰根絶に向けた総合的な対策」は体罰に関する冊子なのでコンプライアンス(法令遵守)についても書かれているが、もしも部活動指導が「本務」だとしたら労働基準法に関してコンプライアンスができていると言えるのだろうか。週に4日6時半までやって、土日は一日中部活動やっている人がざらにいるのが部活動顧問の世界、これを学校長が職務命令でやらせているとしたら行政処分されませんか?違法ですよね。「部活動指導はボランティアで行っている」からこそ、法の目を潜ってやれているわけで、法律守らせるなら部活指導のための人員を配置するしかありません。

東京都教育委員会が「状況を改善」するつもりが本当にあるのなら、部活動の指導者を雇えるように予算をとって各市町村にばらまいてください。ボランティアではだめです。なぜなら教員が付かない状態で部活動が実施できる指導員でなければコンプライアンスにならないからです。

体罰を根絶することはとても大切なこととは思いますが、教育界エライ人たちは現場のことは何も知らずに、もしくは知っていても無視して「指示だけ」するのでした。

だめだこりゃ

—–引用「体罰根絶に向けた総合的な対策」1ページ—–

・部活動指導の職務関連性
東京都教育委員会においては、既に、部活動指導を本務として校務分掌に位置づけていること、人事考課の業務評価の評価項目に位置づけていること、週休日等の部活指導は振替休日や特殊勤務手当で対応していることなど職務との関連性を明確にしている。
一方、部活動を学校管理運営規則に位置付けていない区市町村教育委員会があることや、「部活動の指導は本務でない。」「部活動指導はボランティアで行っている。」と誤解している人がいる状況を改善していくことが課題である。

・中央教育審議会
平成20年1月17日、中央教育審議会は、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について(答申)」において、学校教育活動を「教育課程内の学校教育活動」と「教育課程外の学校教育活動」に大別し、部活動は「教育課程外の学校教育活動」の一つであると整理している。

・学習指導要領
文部科学省は、中学校・高等学校学習指導要領において、「教育課程外の学校教育活動」である部活動について、以下のように言及している。
「学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるように留意すること。」総則「教育課程の実施等に当たって配慮すべき事項」から

—–引用終わり—–

 

2 thoughts on “「体罰根絶に向けた総合的な対策」に部活動は本務であると書かれている件”

  1. >.東京都教育委員会が「状況を改善」するつもりが本当にあるのなら、部活動の指導者を雇えるように予算をとって各市町村にばらまいてください。

    上記について措置の要求をしてみたらどうでしょうか?http://www.saiyou.metro.tokyo.jp/shinnsa/sochiyoukyuu.htm

    東京都の教員で、学校のトイレが汚いからきれいにしてくれ、という要求をしていた方がいましたよ。

    1. コメントありがとうございます。部活動指導者への謝礼というのは今もあるのですが、雇用できるほどは予算は出ていません。おそらく30年以上前から現場からの要求が続いているけれど全く改善されていない問題です。そうですねえトイレも子供たちの健康のためにもっと使いやすくする必要があるのですが、これは市区町村の予算に負うところが大きいようで、ウォシュレットがある学校もあるのに、洋式便器に換えることすらできない学校もあるというのが実態です。議員さんとかも知っているはずですが、優先順位が低いんでしょうかね。

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